~経験が人生を変える~
キャリアの”劇薬”にもなりうる「ママボラン」。創業者が語る立ち上げの思い(前編)



2021年8月にスタートした新生「ママボラン」。mog社長の稲田明恵と副社長の金子麻由子の実体験から生まれたサービスです。ママボランスタートまでの経緯や、サービス内容に込めた思いを2人が語ります。

◆プロフィール




自分たちの育休中の経験から生まれたママボラン。体験でしか得られないものがある

稲田:5年前の2016年に、私たちが当時勤めていたパーソルで現ママボランの前身となるサービスを立ち上げました。今回mogのママボランを新たにスタートしましたが、前ママボランから今に至るまで、形や名前を変えながらいろいろと試行錯誤してきた経緯があります。私たちにとって、それだけ思いがあるサービスです。

5年前、私の1人目の育休と金子さんの2人目の育休が重なった。その時に金子さんから「育休中にボランティアをしていて、すごく楽しいからこれをサービスにできないか」と言われて。私は1人目の育休で、今まで十数年がむしゃらに働いてきたので、この1年間はのんびりしようと思っていました。最初に聞いた時は正直、「育休中にボランティア…?」という感じでした。

金子:私は1人目の育休からの復帰後、マミートラックにはまってしまいました。運よくしばらくした後に、マミートラックは抜け出すことができたのですが、その時に、復職前、つまり育休中に、その後のキャリアのことを考えなかったことがマミートラックの原因だったなと感じたんです。育休は、その先のキャリアについて考える大事な機会でもあったんだと。それで2回目の育休中は何かやりたいと思っていて。同僚に育休中にできるボランティア活動の存在を教えてもらったんです。

ボランティア先は、当時社員7、8人くらいの、ダイバーシティ事業を展開するスタートアップ企業。業務は、メルマガやイベントレポートの作成などで、本業でもやっている内容だったため、それ自体は私にとってスキルアップになるというよりは、自分のスキルを提供している感覚でした。でもそれを実際に他社でやることで、「商品やサービス、会社が違っても、活かせるスキルがある」と自信が持てたんです。

また、社員数人のスタートアップ企業の、いい意味でのごちゃごちゃ感を体験できたのと、ダイバーシティの事業領域に携われたのが私のキャリアにとってすごく大きな意味がありました。ちょうど女性の働き方に興味があって本業でも携わっていたのですが、やっぱりこれからもこの領域にかかわっていきたいと強く思いました。

これらの経験から、育休中に他社でボランティアをやることは今後のキャリアを考える絶好の機会になる、むしろこんな機会を持てるのは育休中しかないと思ったんですよね。

稲田:私は営業と人事の経験が長かったので、金子さんの話を、どちらかというと企業側の視点で受け取っていました。ほかの会社でバリバリ働いていたママが隙間時間でお手伝いしてくれるなんて、企業にとってはありがたい話だから形にしてみたらおもしろいかも、と。

そして、私自身もボランティアをやってみることにしました。受け入れてもらったのは教育系のNPO。もともと教育に関心があったこともあり、このNPOさんで活動することに。業務内容は採用のサポートでした。

実は当時、キャリアにすごく迷いがありました。育休に入る直前まで人事部のマネジャーとしてチームを見ていたのですが、正直あまりおもしろくなくて。それまでは人材紹介事業の法人営業や新規事業の立ち上げをしていて、それに比べて人事の仕事は自分に向いていないと感じていました。でも子どもができた今、もう以前のように深夜まで働いたり、数字を追ったり、大きな責任を持つというような仕事はできないんじゃないかと思って。それなら、人事部は数字をガツガツ追うような仕事ではないし、ママ社員も多い。キャリアとしても安定してそうだし、このまま人事に復職したほうがいいんだろうなという気持ちで育休に入っていました。

そんなことを思いながら、NPOでのボランティアをスタート。実際に採用のサポートをやってみて、この業務は他社でもできるという確信が持てました。またボランティア活動と並行して、この育休中ボランティアを事業化するために、0歳の娘を抱えながらたくさんの企業にヒアリングに行きました。事業内容を提案したり、そこで意見をもらってまたブラッシュアップしたり。そういうのが楽しくて、楽しくて。その時、「私がやりたいのは人事じゃない。採用の仕事はやろうと思えばできるけど、本当にやりたいのは新サービスをつくることだ」という気持ちがはっきりしたんです。この気づきは、友だちに話しても、キャリアカウンセラーに相談しても分からなかったことなんじゃないかと思うんです。実際の経験を通して、はじめて腹をくくれた、自分で納得できたんですよね。

私もそうでしたが、ワーキングママの中には、子どもが生まれ、自分でコントロールできないことが増えたり、時間の使い方の優先順位が変わる中で、これまでとは違う働き方をしなきゃいけないのかな、これまでの自分の経験ってもう活かせないものなのかな、というようなキャリアクライシスを感じる人がすごく多い。そんな時に、「私がやりがいを感じるのはやっぱりこの仕事」という気づきや「私まだまだいける!」という自信って、ほかの世界を知るという体験でしか得られないんじゃないかなと気づいたんです。

こうした金子さんと私自身の経験をもとに企画して、復職後に新規事業としてスタートさせたのが育休中ボランティアのマッチングサービス、前ママボランです。



自分なりの気づきを得て復職していくママたち。キャリアが激変した人も

稲田:前ママボランは、2年間で1,200人を超えるママさんたちにご利用いただきました。利用いただいたのは、めちゃくちゃエネルギッシュなママたち。ほとんど広告も出していない中、いろいろ調べたり、お友だちの紹介などで集まってくれて、育休を有意義な時間にしたいと、ボランティアに参加してくれました。

そして、みなさん自分なりの気づきを得て復職されていくんです。たとえば、大手自動車メーカーで海外向けのマーケティングをやっている方が、「私には、ほかの会社で通用するような専門性がない。自分にできるか分からないけど、ボランティアを経験してみたい」と、ヘルスケアのスタートアップ企業で活動されました。活動後「私の経験って、他社でも十分通用するんだなと思いました!実は転職も考えていたけど、うちの会社って意外といい会社だなと思えたので、会社に戻ります!」と復職されたんです。

また、大手の通信会社にお勤めで、管理職候補として会社から期待されていたけれど、子どもがいる中で管理職としてやっていけるのか不安を感じていると話していた方が、ボランティア活動を経てマネジメントのおもしろさに気づき、「復職して管理職を目指します!」と意気揚々と復職されていきました。

金子:ほかにも、もともとは日本でも有数の大手保険会社にお勤めだったんですが、ボランティア先に転職して今はその会社で役員をやっている方や、ボランティアをしたことがきっかけで勤めていた会社を辞めて、起業した方もいます。

稲田:それだけ、経験って大事なんですよね。人生を変えてしまうものなんだと思います。ママボランをご利用いただく方の平均年齢は35歳前後なんですが、このぐらいの時期に1度、他社に飛び込む体験をするというのもタイミング的にちょうどいいのだろうと思います。社会人を十数年経験して、会社や社会というものが分かってきて、自分のキャリアに主体性を持っていいタイミングなのかなと。

私も、出産前は会社から言われるままに仕事をやっていましたが、育休中のボランティア経験で、初めて自分の主体性が出たというか。誰でもできると思っていた自分の強みも、やってみたら周りから「すごいね」って言われたりして、やっぱり私がやりたかったのはこっちだったんだと気づいたり。会社から離れたからこそ、自分を客観視できるんですよね。

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